まず、一旦余計な枝を取ります。お付き合いください。

• 『生きる意味』から神だのご先祖だのご両親だの子供だの社会だのへの信仰は持ち出さないものとします。

では本題に入ります。
さて、ここに「死にたい」と言っている人がいます。
仮に、その人の人生は、その人にとって砂を齧るような日々で、時折訪れる甘露も、『縋って生きることも出来なくはないが、「このために生きていたい」と思わせる程の魅力はないもの』としましょう。

その人が正直に「死にたい」というお話をしたときに上がる意見として、以下のような言い分があります。

「生命が脅かされるような、すぐ死ぬような環境だったらそうは言えないだろう。生命が脅かされない環境で死にたいと言うのは贅沢な意見だといえる」

はい、自分もそう言うよーっておともだちはどれくらいいるかなー？　手を挙げてー！
…………ふんふん、なるほどー。
じゃあ今手を挙げているおともだちは指先から皮膚やら爪やらべりべり剥がれて骨が表出していって激痛のあまりショック死する病気みたいなそういうやつに罹ろうねー☆

さて、今の手を挙げてくれたおともだちたちの意見にはおかしな点が大きく２点あります。
まず、『生命が脅かされていたらそう言わない』という決めつけにソースが足りない。味噌ダレも多分かかってない。これで通ると思ってるの頭ヤバ杉。

そして重要なのがこっち。
　『ぜいたく』
である。

これ、前提が挿げ替わっているんです……（ここでホラーSE・悲鳴）。

この『生命が脅かされない環境で死にたいと言うのは贅沢だ』という言い分が正しくあるためには、その“贅沢者”が『生命が脅かされない（ここでは一旦「死なない」とほぼ近しい意味とする）』ことに価値があると思っている必要があるのだ。

実際は、
「死にたい（生きていたくない）」＝生命維持に価値を感じない
という状態を吐露しているにも関わらず、そこに
相手が生命維持に価値を感じている前提で「贅沢だね」と言っているのである。

キッショいｎ滅茶苦茶わけわからない意見だよね！

この『生命を脅かされない環境にいるのに贅沢だなあ』という意見が正しく通るのは、その相手が安全なところに暮らしながら「あああーお醤油を一気飲みしたら死んでしまうなんて！　なんて不幸なわたし！！（※ここではこの人物はお醤油の一気飲みに特に大きな価値を感じていない人物とする）」と言っている場合である。
この場合の相手に
「（どこそこと比べて）生命を脅かされない環境にいるからそういうこと言えるんだよ。贅沢だなあ」
と言えれば完璧。あなたの言い分は筋が通っている。ハナマルあげちゃう。

前提挿げ替えんのマジやめてほしい。
真面目な話、なんでお前らみたいな前提挿げ替えクソ人間共があふれる社会で「生きている今に感謝」みたいな信仰がそこそこメジャーなのかわけわからんからな。

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