いやなおんな ブログ なるほど! おセンチさんのための怪談の楽しみ方講座 ※『デッドエンド 死に戻りの剣客』感想 忍者ブログ
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※デッドエンドの感想は下の方なので飛ばす方は続きからござっとスクロールおねがいします。分けて書いてあるので怪談講座だけ読む人は前半だけ読んでね♡



さて、『怪談』というものを、あなたは『何』だと思っていますか?

怪談は、涼を取るためのものでもあり、怖がることを楽しむものでもあり、
事実かそうでないかを置いておいて、誰かの何かを伝えるものでもあります。

『怪談』という言葉は、『怖い話』『ホラー』が指せる意味も内包していますが、それ以外も含む言葉です。
怖さは主題でなくとも、不思議だったり奇怪だったりする話。それも怪談なのです。


怪談と切なさは、非常に相性が良いものです。

理由は4つほど挙げられます。
まず、『怪』としか思えないそれは、我々に理解できない、誰かや何かの痕跡や記憶であることが多いからです。
理解してみれば切ない話だった、という怪談も、ありふれていますね。そこからどんでん返しをして理解不能の恐怖を与えてくれるものもあります。

それから、『涼を取るため』という伝統的な用法のために、夏の話であることが多いからでしょう。
過ぎ去ってしまった夏の景色を、その陰影を思うとき、センチメンタリズムに浸る人間は珍しくないのです。
同じように、誰かの昔話として語られることが多い、というのもあるでしょう。狂ったように踊るマイナスドライバーは、それだけではただ恐ろしくとも、語り手の古い記憶として語られることで、ほんのりと懐かしさを纏います。

そして最後にもうひとつ、あれらは大抵、いなくなってしまった人たちの話だからです。
怖いばかりの物語で命からがら生きのびた語り手が知るのは、恐怖と喪失です。連れ立った家族や友人はいなくなってしまっていることが多いのです。
ストレートにいなくなってしまったはずの家族や友人の幽霊が出てくることも多いですね。

『師匠シリーズ』もそうです。あれはまさしく、ウニが喪った師匠の痕跡がメインであり、更に師匠が語る師匠の師匠・加奈子さんの話まで含まれます。切ないオチや、夏のエピソードも多く存在します。
同じ洒落怖系列の『ナナシシリーズ』もです。藤にとって、ナナシの存在がどれほど大きかったことか。

『世にも奇妙な物語』でしばしば語られる、別の世界にとらわれてしまう怪談も、不思議な切なさを纏うものが多いです。
過去に還る類の物語など、その最たるものでしょう。例えオチに恐怖しかなかったとしても、懐かしさの匂いを消すことはできません。

……と語っている間にも圧力を掛けてくるのはお止めいただけないでしょうか。
面白半分で語っているわけではなく、小論文を書くつもりで必死に向き合っております故、集中力を乱されるのは迷惑です。トイレ行けねえだろ(本音)。

私信はさておき。

わたしは、切なさを含む怪談がとても好きです。それでこそ怪談だとすら思います。実際殆どの怪談には切なさが含まれる余地があります。
だって、幽明境を越えてしまった人たちも、もののけも、神さまも、語り手の前からいなくなってしまってばかりいるのですから。
(そして魅入られたままの語り手は大抵、わたしたちの前からいなくなってしまうのですから)


何かの喪失、理解できずに通り過ぎてしまったものがそこにあった気配……。
そんなところに着目すると、おセンチさんは怪談をより楽しむことができるでしょう。
え? 知ってた? だよね。めんごめんご。


さて、
デッドエンド 死に戻りの剣客』は、怪談です。

まず短編として掲載された二編の感想?とか貼りますね。
『花火』(初出時のタイトル:サムライ・デッドエンド)
『独楽』(初出時のタイトル:秘剣倒れ独楽)

ここまではそこまで怪談って感じではなかったです。
剣に歩む人のお話、という印象の方が強かった。恐怖や怪奇もありつつ、剣豪小説だけでした。

書き下ろし部分である『逆流』『頂』『火花』のうち、『火花』まで読み進めてから、わたし、思いました。

「あ、これ怪談だ……新耳袋で見たやつだ……」

読メにもこんな感想を登録してごじゃります。
怪談はこうでなくては。文体はちぃと取っつきづらいですが、佳き怪談でした。
以下ネタバレありで。

逆流では、まず後半から見えてくる流れの下地が出来たなーって印象。別の人から見た彼というのも面白い。あと読み進めるとこっちは二周目だとわかるのも。(主人公が『頂』前半より後に体験した内容っていうのがわかるの面白い)

山中が無意識に主人公をもっと知った人物だと思っていたくだりはちょっと気になりますね。
死んで戻ってもその時間はどこか裏側に刻まれているということなのか、単にそれっぽさちらつかせるために書いたか(メタ視点)。

あと突然米原(トカゲの王の主人公の一人・米原麻衣と同じ名字)を名乗り出したのもわろた。技似てるしねぇ。主人公の親戚筋なのか、主人公が咄嗟に名乗るような人物からの血筋か……。わたしは後者かなってなんとなく思う。

頂からは一気に怪談みが出てきます(少し未来で読んでる方へ:○○みがあるという言い方が流行していました)。
二度目の挑戦でぐいっとなりふり構わずギリッギリの勝利を収めるというのも熱い展開。勝ったけど、戻らなければこのまま死ぬぞーというところで……

火花です。完全に怪談です。ノスタルジック怪談。めっちゃ好み。

どうでもいいけど死んだら戻るのが『強くないままニューゲーム』、倒れ独楽が『トカゲの王』、そしてなりふり構わず口で刃を押し込んだのが『美少女とは、斬る事と見つけたり』ということで……売り上げや事情により続きを出せていなかったり出せなさそうだったりする話要素がすごいね……。プ、プロテインダネ(錯乱)。

柳原と主人公の関係は、なんかこう、やっぱり、なんかいいな。佐村一光との因縁も。

そして業の深さというものなのか、色々と葛藤しても、変わらない。
やはり誰でも大なり小なりそういうものなのでしょうが、主人公は濃い。特に柳原との縁が。

様々な物語でも、大抵主人公は、たとえ大失敗だとわかっていても『自分の選択』に抗えなくなるんですよね。

……わたしも、同じ道を辿って、ここにまた辿りつくのかもしれない。そう思うと死後の世界がこうだったらやだなーと思います。めっちゃやだ。

しかし彼にとっては修羅の道もまた歩んでゆくものなのでしょうね。
全て読み終わると『花火』の冒頭等の意味が『サムライ・デッドエンド』として掲載された頃からだいぶ変わっているというのが風流です。風流か? いや、まあとりあえず褒めたい。いいと思った。


それと物語を通してひとつの法則がありますね。
それは、物語の中で相手を『斬った』描写のある者は皆、『斬りたいと思って斬っている』ということです。
主人公と柳原は分かりやすく「おまえを斬りたい」から始まり、そこからの道も斬ることに目が向いている。
佐村一光も練習だけではと、人を斬るという本番を求めていた。
山中喜一郎は見栄や恥や期待などというものから動いたから切れなかった
佐村稲……この娘はくせ者だけどとりあえず仇討ではないよね。そんな感覚がする。父が討ち死にを果たした『お侍様の世界』で父を斬った人を斬りたかったんだと思います、最初から。最初はそれこそ、手段を問わなかっただけで。

斬る事に生きて死んでまた斬っていく人たちのお話なのでしょう。
そういう意味では名前ありの人物のうち山中だけザk……ざ、ザックザクに端役でしたね!


以上、そんな感じの感想?を持ちました。

あとこの作品、入間人間作品における『無限ループって怖くね?』作品のひとつとして加わった上に、『死んでこうだったら嫌じゃね?』作品のひとつとしても加わりましたね。誰か食ってくれ的な。

余談だけど、主人公が『おれ』って言ったのはあの頃の柳原っぽい発言を意識していて、『俺』って考えたのは柳原を一部として斬って時間を経てきた自分を意識したのかなって思いました。

追記:作者のデビュー作みーまーの頃結構使われてて近年使われてない(忘れてるだけで一回くらいあったかもだけど)、文章の途中から文章が割り込んでくる表現が復活してましたね!
単語の途中とかじゃなかったから一瞬文章読み違えたかと思ったけど割り込み表現で懐かしかったし、あの途中で意識が移っちゃうの、あるあるで好き。


本編は終わりとしてあとがき……短っ!
上の方でも既にちょろっと触れちゃったけど死後の世界こうだったらヤダネー。色々な意味で自由大事さ……。
サイトのニュース欄で発想の元が格ゲーだと思うというのが明かされてますが……な、なんかちょっとそれを意識しすぎたらコンティニューしづらくなりそうだなそれ……。格ゲーはやらんしいいけど。
あとがきの短さも、ストレートに語られるニュース欄も、お忙しそうですね。
大変そうだけどぼくは『いもーとらいふ』の文庫などが楽しみです。

あとイラストめっちゃイイですありがとうございますhakusさん。
サムライ・デッドエンドの絵もよかったし秘剣倒れ独楽の絵めっっっっちゃよかったので載せれてない(構成的にやたら絵を載せられてたら興ざめだったのわかるので)の残念じゃ><



ちなみに表紙が公開されたときTwitterで「入間さんそっくり!」って言ってる人が結構いましたが……
わたしはいるまさんに恋い焦がれて云年、何度も遠くから近くからお顔を拝見して参りました。最初こそ眩しくて見れなかったものでわかりませんでしたが、わたしもちゃんとお顔を見れるようになりました。
結論から言います。それほど似てないです。不細工と言いたいわけではないです。主観オンリーで言うとでーりゃー可愛いですし! 入間さんのととさまの描く肖像は結構似てます。
でも表紙の二人そっくりは流石にナイナイ……ハードル上げすぎあるいは下げすぎ。(※そこの判断は個人のお好みで)
いや『表紙映えするようにクッキリハッキリした西洋顔にしてあるだけで実際はもっと日本人らしいすっきりした顔立ちなんですこの人たち』と言われたらかなり似ているかもしれない。


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分家(閉鎖):手紙の墓場この記事参照


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